4巻第25話 三人の母
第二十五話 三人の母
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X華の地元のスーパーには『もずくベーカリー』というパン屋が入っていた。
X華は子供の頃からこの店の常連でレジの五十井(いかい)さん、有田さんとも知り合いだった。
そのベーカリーには沢田夫妻もよく訪れていた。
「ちーっす」
沢田拓真さんの奥さん、凛子さんはXXクリニックの通う妊婦だが妊娠二か月目からつわりがひどく、この店のアンパンしか食べられないと毎日のように夫婦で来店していた。
「拓ボー、ちゃんとお金払ってね。」
「やだなー当たり前じゃないっスかー」
「拓ボー小学校の時チョコパンもっていったでしょ」
「そんなガキの頃のあだ名はずかしいっスよー」
「あんたがいつまでもガキだからそう言うんだよ。
もうお父さんになるんだからビシッとしな!」
五十井さんに説教されて拓ボーは照れた。
沢田拓真さん(25歳)は小学生の頃から万引き癖のある人で、X華の町で知らない人はいないほど有名な不良だった。
中学卒業後は進学も就職もせずに昼間からフラフラしている人とうわさされていた。
バイクに特攻服、模造刀を片手に暴走しているような日常だった。
「それって『もずくベーカリー』のパン?」
クリニックの更衣室でパンをほおばるX華に看護師が話しかけてきた。
「はい」
「あそこのフランスパンおいしいよねー」
「今日そこで沢田さんに会いました。」
「沢田さんね・・・つわりがあんなに長く続くのもめずらしいよね。」
「旦那さんはちゃらんぽんだし、心配だわ。
なんであんな人と結婚したのかねー」
うわさによると奥さんの凛子さんは当時お堅い仕事をしていた。
何もかも自分と正反対の拓ボーにひかれてスピード結婚したらしい。
うわさでは拓ボーは中学の頃から年上の女性とばかり付き合っていたらしい。
母性本能をくすぐるタイプってヤツかな。
(なんて凛子さんには言えない・・・)
凛子さんは男の子を出産予定でつわりにもめげずに生まれてくるのを楽しみにがんばっていた。
凛子さんは元気な女の子を出産した。
「え?先生男の子って言ってたじゃないっスか!?」
「体が大きいからそうだと思ってたけど付いてなかったねー」
「いやーでも女の子でもかわいいっスねーどっちでもいっかー」
「な?」
「・・・・」
はしゃぐ拓ボーに比べて出産した凛子さんの反応は鈍かった。
出産の疲れで意識がもうろうしていると周りは思っていた。
しかしそれから三か月後、凛子さんは姿を消していた。
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