5巻 第33話 分娩台の涙
第三十三話 分娩台の涙
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妊娠出産に対する女性の想いは多様である。
生まれてくる子供への想いはもちろんのこと、当人の家庭環境や生き方などによってそこに別の想いが加わることもある―
「気分はいかがですか?」
「はい、だいぶ楽になりました」
「妊婦さんの貧血はよくあることなんです。
ゆっくり休んでくださいね」
ベッドで休む妊婦にX華は優しく声をかけた。
「ご家族はどうされました?」
「あ、買い物に行くって」
ガチャ
「ごめんねー遅くなってー」
「亜希ちゃんお腹すいたでしょー」
にこにこ顔で病室に入ってきたのは義母と夫だった。
二人は貧血の亜紀を気遣ってレバーや赤みの肉、亜希の好むものを買ってきたのだ。
「義母さんすみません、でも今食欲なくて・・・」
「あら・・・こんな時だから食べなきゃだめよ」
「じゃ、プリンはどう?」
「さっぱりしてるわよ」
(あんなふうにしていると親が子供の世話をしているようにしかみえない・・・)
中谷亜希さん(25歳)は妊娠2か月でクリニックに通院しているのだが幼少期に心臓病を発症していた。
病気のこともあって体が未発達なこともあり、見た目は高校生のようだった。
その後亜希たちは先生の診察を受けた。
「妊娠中は血が固まりやすい傾向があるので血栓ができることがあるんです。
亜希さんは心臓病の後遺症で心臓の動脈が狭くなっていますね。
「そのため血栓ができた場合、そこに詰まってしまう恐れがあります」
亜希たちは神妙な面持ちで聴いている。
「そしてそれは心臓だけではなく他の場所にもできることがあります。
その場合、肺塞栓、脳こうそくなどが起こります。
妊娠中、分娩中、出産後・・・いつどこで起こるかわかりません。
本当はバイパス手術をされてからの方がより安全に出産できるんですけどね・・・」
それを聞いて夫と義母は口々に亜希の体を心配した。
「亜希ちゃんの気持ちは変わらない?もし何かあったらと思うと私心配で・・・」
「亜希のことが一番大切なんだ。これ以上体が悪くなったら取り返しのつかないことになる・・・」
「私が生みたいと言ったせいでみんなに心配かけてしまってごめんなさい」
亜希は新しい命の宿るお腹にそっと手を当てた。
「だけど・・・お腹の子をなかったことにしたくないんです。どうか産ませてください。」
亜希の決意にはある理由があった。
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