4巻第26話 置き去りの子
第二十六話 置き去りの子
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X華の通っていた高校(准看護科)では病院実習があって、大病院のすべての科を回っていた。
NICU(新生児集中治療室)の実習は見学のみ、基本赤ちゃんに触れてはいけない決まりがあった。
ここには厳重に管理された保育器の中で超低出生体重児(1,000g未満)を含むあらゆる病的新生児が酸素や栄養を与えられながら治療を受けている。
「おはようございます、今日の実習生担当の丸山です。
なんでも訊いていいからレポートは最後に提出してください。」
NICUの主任の丸山さんは私たち学生に対してとても親身になってくれた。
丸山さんは1997年当時30歳、20代で若くして主任になり、NICUを仕切っていた。
「丸山さん、急にヒナちゃんの心音が下がって・・・」
「先生呼んできて!私見てるから
あと輸液追加で誰か持ってきて!5mlシリンジもお願い!」
いつも笑顔が印象的な人で赤ちゃんの容態が急変しても動揺することもなく的確に指示を出せる人だった。
そんなNICUを毎日見学していて気付いたことがあった。
(あの子って・・・どうしたんだろ・・・)
NICUには一人だけほかの赤ちゃんとは様子が違う子がいた。
その子は何の機械にもつながれておらず、NICUの中で一番大きな体をしていた。
X華はその子のことが気になってチラチラ見ていた。
「沖田さんどうしたの?」
それに気が付いた丸山さんが声をかけてくれた。
「あ・・・大きい赤ちゃんだなーって」
「来月で25か月になるからね。」
「え!2歳なんですか?
こんな大きい子なのにNICUにいるんですか?」
保育器に入っているのは未熟児だったり病気だったり、小さな赤ちゃんのイメージだ。
「・・・この子はちょっとワケありでね。
2年前のことなんだけど・・・隣町から妊娠27週の妊婦が救急搬送されてきたの。
自宅で急に倒れて意識不明だった・・・
先生判断ですぐに帝王切開になってこの子はなんとか助かったんだけど1200gの未熟児で重症仮死だった。
それですぐにNICUにやってきたの。
残念なことにお母さんはその日のうちに亡くなった。
旦那さんは急な事態に混乱していた。
別室で先生が子供の状態をくわしく話したんだけど、
「家族に連絡しなきゃ・・・すみません、ちょっと電話してきていいですか?」
そう言って出ていったきり、お父さんは戻ってこなかった・・・」
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