3巻第18話 ハイリスク出産 あらすじ
第十八話 ハイリスク出産
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X華がバイトするXXクリニックではいつものように先生が診察をしていた。
「現在妊娠5週目に入っているところですね」
診断結果に菊田里佳子さんは神妙な顔つきになる。
「やっぱり・・・家で検査した時も陽性だったので」
里佳子さんは32歳でこれが初めての妊娠だった。
「家族になんて言えばいいか・・・また心配させちゃう」
彼女は未婚でも未成年でもない。
ただ里佳子さんは10歳の時に劇症1型糖尿病を発症。
その時に網膜症で弱視になった。
インスリン療法、食事療法、運動療法中という状態だった。
「HbA1c(血糖値コントロール)が6〜8%・・・安定してないな・・・」
先生は難しい顔になる。
「平均6%前後なら全然OKなんだけど」(この数値は病院によって多少異なります)
糖尿病患者の妊婦が出産を許可されるのは大まかに分けて
一 極端な肥満でないこと
二 進行した腎症、網膜症がないか安定していること
三 血糖値コントロールがよいこと
など、条件があった。
X華がバイトをしていた当時の1997年頃には今のような超即効型や特効型溶解インスリンはなく、1型糖尿病の血糖値コントロールは難しい時代だった。
「産むと決断された場合、ハイリスク出産になります」
母体には糖尿病昏睡や出産時の脳出血、けいれん発作などが起こる可能性があり、胎児は催奇形性が高くなる可能性があったし生まれてからも低血糖症になる可能性があった。
並大抵の覚悟では決断できない状況だった。
「計画してない妊娠だったので、夫に相談してみますが・・・産むことはないと思います。」
「そうですが・・・血糖値が安定すればまたチャンスはありますから」
「すみません、ありがとうございます。」
里佳子は頭を下げて診察室を後にした。
X華は里佳子の後姿を見ながら心配することしかできなかった。
数日後、X華は小学生の運動会を眺める里佳子を見つけた。
「こんにちは」
「あっ、こんにちは。今日病院お休みね」
「運動会を見てたんですか?」
「そうなの、昔を思い出しちゃって・・・」
里佳子は糖尿病のせいで運動は制限され、いつも見学だった。
「ウチの親もあんなふうに応援したかっただろうな・・・」
里佳子は自分の不甲斐なさを責めているようだった。
「糖尿病の上に網膜症にまでなって、親はショックだったと思う。でも大切に育ててくれてね。私何も親孝行できてない」
「今回だって私が何でもなかったら産めるのにまた迷惑かけちゃう」
X華は素直な気持ちを伝えた。
「皆さん生まれてきてくれるだけで他には何もいらないって言うんです。多分苦労したとか迷惑だなんて思ってないですよ」
「この目が見える間に自分の子供の顔を見ることができるのかな」
失明の恐怖に耐えながら里佳子は呟いた。
「未来を自分から閉ざさなければ子供がお母さんを選んできてくれると思います」
X華の言葉を聞いて里佳子は帰って行った。
そしてそれが彼女の重大な決意につながっていった。
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